研究概要 |
細胞増殖因子は細胞膜上の特異的な受容体に結合してその活性を現わすこと, しかもこの受容体にチロシン残基を燐酸化する蛋白質燐酸化酵素の存在が明らかにされている. 一方これらの増殖因子依存性に蛋白質のセリン残基が燐酸化される現象が知られている. しかしこの2つの蛋白質燐酸化酵素の作用についての詳細は明らかにされていない. 私共はチロシン残基を燐酸化する酵素を研究中, 血小板や脾細胞を含む血液系細胞の細胞質にこの酵素が多量に存在することを見い出した. 血小板では分子量71000のチロシンキナーゼを単一までに精製することに成功した. 現在この酵素のもつ性質並びに天然基質について研究中である. 一方増殖因子依存性に活性化される細胞膜のセリンキナーゼについて検討したところ, イオン強度やpHに依存性に活性化されることを明らかとした. しかもこの反応はトリプシンインヒビターやロイペプチンによって抑えられることから膜に存在するプロテアーゼの関与が想定される. この膜のセリンキナーゼについて調べたところ, 膜のCa^<2t>燐脂質依存性プロテインキナーゼ(Cキナーゼ)が制限消化を受け活性化されたことが明らかとなった. 実際細胞増殖のモデルとして再生肝のS6キナーゼ活性について調べたところ, Cキナーセが限定消化を受けて活性化されたことが明らかとなった. この活性化酵素によるS6蛋白質の燐酸化部位を解析したところC末端に近いSer-36, Ser-240, 及びSer-242が主な部位であった. これらはインスリン処理後のS6蛋白質の燐酸ペプチドに含まれており, 増殖因子の刺激によって認められる数種の燐酸化部位の少なくとも一部に対応する. これらの結果は細胞増殖に伴う蛋白合成の促進時にNa^+/H^+交換送系の活性化を介するCキナーゼの限定消化による活性化で重要な役割を演じていることを示している. 現在これらの2つのキナーゼの相互関係についても研究を続けている.
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