研究概要 |
1. ペルオキシゾーム型セリン:ピルビン酸アミノ転移酵素(SPTp)の誘導条件の検索及び生合成過程の解析-SPTのmRNAには1900ntmRNAと1700ntmRNAが, 翻訳産物には45KDa^-蛋白質と43KDa^-蛋白質があり, それぞれ前者がミトコンドリア局在SPT(SPTm)に対応する. 1700ntmRNA, 43KDa-翻訳産物とSPTpの対応をみる為, ペルオキシゾーム増殖剤であるDiethylhexylphthalate(DEHP)の投与効果を調べた. DEHPによりSPTpが増加し, その際の主なmRNA, 翻訳産物は1700ntmRNA, 43KDa-蛋白質であったが, 増加がゆっくりでしかも約2倍にすぎないため, これらmRNA, 翻訳産物の有意な量的増加は認められなかった. そこで改めてSPTpの誘導条件を検索し, T_3授与によりSPTpの約3倍の誘導を認めた. 更にT_3を3日間連続投与したラットの肝臓では1700ntmRNAの量, 43KDa-翻訳産物の量が明らかに増加していた. 1700ntmRNAと43KDa-蛋白質はそれぞれSPTpに対応するmRNA, 翻訳産物であることが強く示唆された. 2. SPTpの複製-SPTpとSPTmをそれぞれグルカゴン, DEHPを授与したラット肝臓のペルオキシゾーム, ミトコンドリアから精製し, 分子量, 四次構造, PI等蛋白としての性質, 生触媒としての性質に検出可能な相異がないことを確認した. SPTmに対するCDNAの種々の部位のフラグメントをプローブとしたハイブリッド形成実験等で1900ntmRNAと1700ntmRVAは5′末端部分のみ異なることを示唆する結果が得られていたので, 次いでSPTmとSPTpのN末端アミノ酸配列を検討した. その結果, SPTmについては(Gly)-Ser-His-…というアミノ酸配列が容易に確認されたが, SPTpのN末端アミノ酸は現在までに行った実験では検出されなかった. 現在このことの確認を急いでいる. 3. 今後の方向-まずSPTpとSPTmの異同, 特にN末端アミノ酸配列が本当に異なるのかどうかを確認し, 次いでペルオキシゾームへの取込み実験により43KDa^-翻訳産物とSPTpの関係を確認する.
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