研究概要 |
研究代表者は, ヒト組織細胞中に存在する生命維持, 疾病予防に主要な役割を担う蛋白質のin vivoにおける作用機序が明確でない点を踏まえ, in vivoの膜系をin vitroでmimicする人工脂質膜(リポソーム)系の導入を計画し, 研究分担者と協力して次の点を明らかにした. 1.腫瘍壊死因子(TNF)及びインターフェロン(IFN)作用機序の分子論的解析, TNF及びIFNの腫瘍細胞に対する特異的傷害作用に関してまず, TNF及びIFN-γがリポソーム膜損傷作用をもつことを見出し, 両サイトカインの作用発現の違いが抗腫瘍作用の相違と相関することを明らかにすると共に, リポソーム膜損傷作用における両因子相乗効果の存在を見出した(JBC,1987;Ther.Res.,1987). さらにIFN-αを含めた同種の研究より, サイトカインの膜作用性が腫瘍細胞傷害作用の決定因子であることを明確化した(science,投稿中). 今後これらサイトカインの膜作用性に対する膜脂質組成の影響, 膜における存在状態構造状態等について検討を加え, その機能発現機序を分子論的に明らかにしてゆく計画である. 2.受容体仲介エンドサイトーシス及び細胞内物質輸送におけるクラスリンの機能発現機構の解析, 受容体仲介エンドサイトーシス及び細胞内物質輸送は, 形質膜あるいは細胞内膜系の膜融合及び膜形成を通して駆動する. まず, クラスリンのリポソーム膜融合機能に対する役割について解析し, その分子論的機序を明らかにした(JB,1987). さらに, 蛋白質によって誘起される膜融合の普遍的機構を実証した(BBA,投稿中). 一方, この過程における膜形成は, クラスリンを構成成分とするcoated pits及びcoated vesiclesの形成である. 今後, クラスリンによって被覆されたリポソーム"clathrin-coated liposomeYを作製し, その膜形成機構膜形成因子を明らかにしてゆく計画である.
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