研究概要 |
I.ラット肝臓より精製した酵素の分子構造を決定. 低角レーザー光散乱法や準弾性光散乱法などの物理化学的解析から本酵素複合体は分子量が約75万沈降係数が20Sの巨大分子であることを証明し, 軸比, 摩擦比の測定から完全な球状分子でないことを示した. 更に, 酢酸ウランによる負染色後, 電子顕微鏡で単一分子の形状を観察すると, 分子は対称的な環状構造を示した. 更に, X線小角散乱法で溶液中におけるこの酵素の分子モデルをシュミレーションすると, 電子顕微鏡で得られた結果とよく一致した. 一方, この高分子量複合体を構成する約15個のサブユニットを逆相HPLCで単離し, それらの性質を調べたところ, それら各々は互いに関連しないポリペプチド鎖であること, 即ち本酵素がヘテロ多量体構造であることが判明した. II.この高分子量プロテアーゼが真核細胞に普遍的に存在していることを証明. この不活性型で且つ多触媒活性を有する酵素の分布を調べると共に種間の相違について比較検討した. ラット肝臓以外にヒト肝臓, ニワトリ肝臓, ツメガエル卵母細胞及びイーストから全く同じ酵素学的性質を有するプロテアーゼを同種の方法で分離精製し同時に各々をウサギに免疫し特異抗体を作製した. 精製分子は何れも20Sの沈降係数, 分子量80万前後等電点5.0で且つそれらのアミノ酸組成及び円扁光二色スペクトルから推定した二次構造は互いによく似ていた. また電子顕微鏡観察によるそれらの分子形状は互いに区別が出来ない程よく似ていた. しかし, これら分子のgross-structuseの進化的保存性に反して免疫学的解析, 即ちゲル内二重拡散法やイムノブロット分析によるfins-structusehは互いに区別され, 強い種特異性が見られた. またサブユニット構成については全ての酵素が多成分複合体であることは共通しているが, 個々の成分については種特異性が見られた. 現在, これら全ての成分の遺伝子を単離中である.
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