私共は分担研究を明らかにするために、トランスフォームしていないマウスBalb/3T3、及びラットNRK細胞より各々独立の選択方法でEGF応答が欠損した変異株を単離した。そこで、 1.マウスBalb/3T3細胞より単離したMOー5株は、EGFレセプター(EGF-R)のEGF応答が欠損している。 (1)MOー5株に、V-srcやポリオーマウィルスmiddle T抗原遺伝子を導入した結果、Ba1b/3T3に較べトランスフォーメーション率は極めて低いことが観察された。 (2)さらにこのトランスフォーメーション効率が低い表現形質は、細胞融合の結果劣性であることがわかった。 (3)ヒトEGF-RのcDNAをMOー5株に導入して、ヒトレセプターが発現している株を樹立した。この導入株は、middle T抗原遺伝子やV-src遺伝子導入によってトランスフォーメーションフォーカスがみられた。 (4)現在さらにヒトEGF-Rのリン酸化欠損変異cDNAを導入して、トランスフォーメーションの有無を確かめつつある。 2.正常ラット腎NRK細胞は、EGFとTGF-βの両因子存在下にはじめて寒天内増殖がみられる。そこでこの寒天内増殖能の獲得過程におけるEGFとTGF-β及びそのレセプター応答の役割を明らかにしたいと考えた。そこで (1)NRKより変異剤処理後、EGFとコルヒチン存在下に選択し、EGFの増殖刺激を受けない細胞株2株、Nー3とNー9を単離した。 (2)Nー3はTGF-βのみで高い寒天内増殖能を示した。しかしNー9はEGFとTGF-β両存在下にも寒天内増殖能を示さなかった。 (3)Nー3が何故TGF-βだけで寒天内増殖を示すのか、あるいはNー9が何故示さないのかを、現在探索中である。
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