血清中の抗体を測定する従来の方法では血清中に存在する多量の非特異免疫グロブリンが障害となり高感度測定が困難であった. この点を克服するために抗インスリン抗体をモデルとして高感度酵素免疫測定法を開発した. 抗インスリン抗体を含む血清中に少量のインスリンを添加しインスリンと抗インスリン抗体との結合物を形成させた後遊離の余剰インスリンをチャーコール処理などにより除去した. インスリンと抗体の結合物を酸処理して抗インスリン抗体を不活性化することにより解離させたインスリンを高感度酵素免疫測定法により測定した. この方法をヒト血清中抗インスリン抗体の測定に応用した結果従来法の測定感度と比べて一千倍から三千倍も高感度であった. また抗インスリン抗体と結合したヨーソ^<125>標識インスリン放射活性を測定するラジオイムノアッセイと比べても十倍から三十倍高感度であった. そこでこの方法をインスリン治療下の患者血清中抗インスリン抗体の測定に応用したところ十八日以上インスリン治療を受けた患者ではその九十パーセント以上が抗インスリン抗体を保持していることが明らかとなった. ちなみに従来法では数パーセントの患者にのみ抗インスリン抗体が証明された. 次にこの方法をインスリン以外の抗原に対する抗体の測定にも応用するためチャーコールやポリエチレングリコールにかえて抗イムノグロブリン抗体不溶化セファローズを用いて抗原抗体結合物を余剰の遊離抗原から分離する方法を試みた. その結果抗インスリン抗体の測定では上記の新しい測定法にはおよばないが従来法より高感度となることが明らかとなった. このような抗インスリン抗体を測定するための高感度酵素免疫測定法が一般化できるものかどうかを見極めるため抗原抗体結合物から酸処理により抗体を不活性化して抗原を解離させた結果成長ホルモン甲状腺刺激ホルモンなどの抗原性が保たれこの方法の一般化の見通しを得た.
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