前年度では、血清中抗インスリン抗体をモデル抗体として用い、超高感度酵素免疫測定法を開発した。つまり、血清中抗インスリン抗体を少量のインスリンと反応させた後、インスリンと抗インスリン抗体との結合物をデキストランチャーコール、ポリエチレングルコース処理により遊離のインスリンと分離し、酸処理により抗インスリン抗体を不活性化して、抗インスリン抗体と結合していたインスリンを超高感度サンドイッチ酵素免疫測定法により測定した。その結果従来法より千倍から三千倍高感度化された。今年度は、インスリンより小分子であるハプテンに対する抗体の超高感度酵素免疫測定法の開発について検討した。抗インスリン抗体の測定の場合と同様、ハプテンと抗ハプテン抗体の結合物を遊離のハプテンと分離することはチャーコール処理などにより容易である。しかし、抗インスリン抗体の場合には抗インスリン抗体の結合していたインスリンを非競合法であるサンドイッチ法により測定したので超高感度が得られたのに対し、ハプテンは一般に非競合法では測定できず、競合法では超高感度とはならない。そこで、ハプテンの代りにハプテンとインスリンなどとの結合物を用いることを検討したが、チャーコールに吸着され、しかもサンドイッチ法により超高感度で測定される物質のうち目的にかなう適当なものが当面ないことがわかった。つまり、ハプテンとインスリンの結合物を用いると抗ハプテン抗体とともに抗インスリン抗体をも測定することになり不適当である。そこでハプテンを非競合法により超高感度で測定する方法あるいは抗体を測定する新しいシステムの開発をすることがより有効であるという結論に達し、現在開発中である。また、前年度に開発した超高感度抗インスリン抗体測定法により、治療前のI型糖尿病患者の抗インスリン抗体を測定したところ、一部の患者に濃度は低いながらも抗インスリン抗体が証明された。
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