1.G6Pアーゼの活性抑制機構 ラット灌流肝ではグルコースを基質とするとグリコーゲンはきわめて遅い速度でしか合成されないが、フルクトースを同時に投与するとその合成速度は顕著に促進された。各種条件下でのグリコーゲン合成を分析した結果、グリコーゲン合成速度はグリコーゲン合成酵素によって、グリコーゲン合成酵素はG6Pレベルによってそれぞれ決定されることが明らかとなった。フルクトース投与によって細胞内に蓄積したF1PがG6Pアーゼを阻害し、その結果G6Pレベルが上昇したと考えられた。また灌流肝でグリコーゲン合成が起こりにくかったのはin vivoで作用していたG6Pアーゼの活性抑制機構が失われた為であると考えられた。in vivoでのこの機構に関して、摂食後細胞質で生成するPPiがG6Pアーゼの存在するERの中でCa2+と複合体を形成し、G6Pアーゼを阻害している可能性を検討した。現在までにこの証明には至っていないが灌流肝にグルカゴンとアドレナリンの存在下で酢酸を投与した時に高濃度のPPi-Caが肝内に蓄積することを観察している。 2.G6P translocaseの精製と性質 肝ERをコール酸で可溶化した後、硫安分画を行ない部分精製したG6P translocase標品を得た。リポソームを用いてG6P translocaseを再構成し、その測定系を確立した。さらに傾光標識化合物(mBBr)と特異的阻害剤(DIDS)とを用いてG6P translocaseがSDS-PAGE上で分子量5.5万の蛋白であることを示した。最近ハイドロキシアパタイトカラムを用いて精製し、これがきわめて疎水性の強い蛋白であることを明らかにしている。
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