研究概要 |
ラットのセリン脱水酵素(SDH)遺伝子をクローニングする前に, まずSDHcDNAの塩基配列を, ジデオキシ法により決定した. SDHcDNAインサートの長さはポリ(A)10塩基を含めて1170bpであり, 翻訳終止コドンは〓A〓と推定された. 精製酵素を用いたアミノ酸組成の分析値を考慮に入れると, 翻訳開始コドンまで, わずか数塩基足りないと考えられる. しかし, このcDNA中には大部分のアミノ酸コーディング領域が含まれている. 次に, このcDNAの5′端より800bpのPstI断片をプローブとしてSDH遺伝子のクローニングを試みた. ラット遺伝子ライブラリーから1個のポジティブクローンを得, サザンブロットハイブリダイゼーションにより, SDH遺伝子クローンであると同定した. このクローンのインサートは約17.5kbであり, 1170bpSDHcDNAの構造全体がこの中に含まれていることが判った. このSDH遺伝子クローンはシャロン4AベクターのEcoRIsiteにインサートが挿入されており, EuRIとSmaIの二重切断を行うと5′端より, 3, 1.2, 2.6, 9.2, 1.2kbの5個のDNA断片を生じる. SDHcDNAの5′端を含むと予想された2.6kbの塩基配列を決定したところ, この断片はcDNAの5′端より500bpの断片と一致する構造を含んでおり, cDNAの5′端よりも上流(あるいはイントロン)構造を300bp含んでいた. しかしながら, この300bp中にはプロモターと思われる構造は見当らず, cDNAの5′非翻訳領域かもしくはイントロンと考えられる. 現在2.6kbよりも上流の1.2kbと3kbの塩基配列の決定を進めている. 一方, TO遺伝子(トリプトファンオキシゲナーゼ)については可能性のある1個のクローンを得ているが, 詳細な検索はまだ今後に残されている.
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