研究概要 |
1.視神経再生モデルの作製について, ウシガエル視神経をmicrosurgeryにより切断して3カ月後の視神経の組織標本(HE染色)を作製したところ軸索の伸長が認められた. これにより, 形態学的には再生していると推測されたが, はたして本当に軸索輸送が回復しているかどうか, これを検討するために硝子体腔にアイリトープラベルのアミノ酸([3H]leucine)を注入し, 網膜神経節細胞の神経終末である視蓋部での放射活性を測定したところ, 視神経切断カエルでは対照と同程度の放射活性が認められた. 以上の結果より, 視神経の再生が形態面, 機能面から証明された. この視神経再生モデルの作製については, 視神経切断時に伴走血管を損傷し出血させなければ, ほぼ全例視神経の再生が確認できた. 2.Northern hybridizationによる遺伝子発現の解析について, 発癌遺伝子群(src,myc,ras,erb B,fos)の発現は認められなかったが, 視神経を切断して, 1.2時間をピークとしてtubulin mRNAの強い発現が認められた. これまでに, 金魚の視神経切断後, 4日目よりtubulin mRNAの発現がみられたという報告(Burell et al.,Brain Res.,168(1979)628-632)があるが, 今回の我々の結果は, これとは発現時期が異なるため違った現象をとらえたものと思われる. このように視神経切断後に発現する遺伝子の解析については, 細胞骨格であるtubulinのmRNAが視神経切断後の早期に一過性に発現するという大変興味ある結果が得られた. 今後は, 視神経切断後のより長期間のtubulin mRNAの動向について検索すると同時に, 入手可能な他のDNA probeを用いたNorthern hybridizationによる遺伝子発現の解析も行いたい. 3.DNA libraryを用いたクローンの選択については十分な結果が得られなかったので今後, 再度行いたい.
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