研究課題/領域番号 |
62570141
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
斉藤 澄 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (20114754)
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研究分担者 |
田中 直見 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (60111530)
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キーワード | 慢性肝疾患 / 細胞周期 / 肝生検 / In vitro標識 / Bromodeoxyuridine / 免疫組織化学 |
研究概要 |
目的:慢性肝疾患における一定時期の肝細胞の障害と線維化の度合は、常に進行するのではなく、炎症の盛衰と肝細胞再生の活性化により変動するもので、そのために病理組織像から病期と予後を判定することが困難であるものと考えられる。本研究では肝構成細胞の細胞回転を知ることにより、日常の肝生検組織診断に際し病期の判定、肝細胞の予備力、予後の推量に役立てようとする。 病例と方法:肝硬変症(LC)4例、慢性活動性肝炎(CAH)12例、慢性非活動性肝炎(CIH)2例、急性肝炎治癒期(AH)1例、アルコ-ル性肝障害(ALI)1例の計20例の生検肝組織を用いた。1時間の短期組織培養にてBromodeoxyuridine(BrdU)を取り込ませ、抗BrdU単クロ-ン抗体を一次抗体として、ABC法にて免疫組織化学を行ない、S期肝細胞の標識率と分布を求めた。併せて、細胞増殖に関与するといわれるEGF、EGF receptor、c-Ha-ras p21、c-myc p62の発現を免疫組織科学的に検討した。 結果:BrdUにて標識された肝細胞はすべての症例において観察され、その平均は16.5±7.3%であった。CIH2例の平均が3.6±2.6%であったことから、LCやCAHにおいては肝細胞が活発に再生を繰返していることが明らかとなった。LC4例とCAH12例の平均標識率は22.4±4.2、16.9±3.8%であり、両者の間には有意の差異が認められた。LCやCAHの原因別による標識率には差異は認められなかった。また、組織学的な炎症細胞浸潤や肝細胞壊死の度合とも、肝細胞のBrdU標識率は相関しなかった。Growth factorやoncogene protein発現の検討ではEGF(0/20)、EGF receptor(0/20)、c-Ha-ras p21(7/21)、c-myc p62(2/20)であった。しかし、p21やP62の発現症例がBrdUの標識法との間に一定の関係は認められなかった。 考察とまとめ:生検肝組織を用いた in vitroのBrdU標識法にて、LC22.4%、CAH16.9%という高い標識率が得られ、これらの慢性肝疾患では肝細胞が活発に再生していることが明らかとなった。肝細胞の標識率は組織の線維化とに相関し、炎症細胞浸潤や肝細胞壊死の度合とは関係しなかった。肝組織におけるgrowth factorやoncogene protein発現と、肝細胞の再生の度合には直接の関係は認められなかった。
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