研究概要 |
63年においてはAILD以外の多クローン性B細胞増殖症における樹枝状細網細胞(FDC)の態度について主として検討した。 1.南カリフォルニア大学の協力をえて入手したエイズ関連(PGLおよびARC)のリンパ節5例及びカポシ肉腫5例について、凍結切片を用いFDC関連マーカー等を検索した。臨床的にPGL、ARCの段階にある4例ではいずれも高度の胚中心過形成がみられ、この部位に一致してFDCが著明に増生し、規則正しい網目を形成していた。これらのFDCはDRC1,CR1,CR2,5'-Nが陽性で正常のものと変らなかった。しかし残りの1例では一部の胚中心に崩壊像がみられ、この部分ではFDCの数の減少、細胞質突起の消失、網目状構造の崩壊がみられた。さらに胚中心内のBリンパ球にはKi-67陽性率の低下がみられ、B細胞の増殖能力とFDCの網目の統合性との間に相関があることが示された。カポシ肉腫では5'-NとIaが陽性であったが、DRC1,CR1,CR2は陰性で、この細胞がFDCに由来するという証拠をえることはできなかった。この結果は昭63.5札幌での第77回日本病理学会総会で発表した。(日病会誌77:164,1988) 2.特発性プラスマ細胞性リンパ節症(IPL)については新鮮材料2例を含む5症例についてFDC及びリンパ球の性状について検討した。リンパ節全体に認められる胚中心にはいずれもFDCの網目がよく発達しており、マーカ上も正常のものと変らなかった。むしろ変化はリンパ球の側に見られ、B細胞では正常にくらべKi67陽性の増殖分画が胚中心内で減少していた。また胚中心内T細胞ではCD8陽性のサプレッサーの減少が認められ、さらに狭小化した副皮質ではT細胞の全体的減少があった。(昭63.11.臨血発表) 以上の事実から多クローン性B細胞増殖症においては(1)AILDやAIDSのようにFDCに形態的、機能的異常があると考えられるものと、(2)IPLのようにFDCよりも免疫調節T細胞の異常が示唆されるものの2型がある。
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