研究概要 |
真菌感染症の組織診断の重要性は, 培養検査がルーチンに行なわれていないことを背景として, 以前より高まりつつある. 本研究は真菌感染症の適確な組織診断のために, 組織内の病原真菌の形態特徴を一層明確にして診断指標を確立するための一助として, 組織内に比られる真菌類似小体(false mycosisと呼ぶ)の実像を明らかにせんとするものである. 現在までにfalse mycosisとして蒐集した標本材料は200例を超え, 各資料についてヘマトキシリン・エオジン染色, PAS染色, Grocott染色, Gram染色などを施し, 真菌類似小体の形態, 染色性を検討しつつある. 酵母あるいは酵母株菌と鑑別すべきものとして, 子宮頚癌放射線療法後に出現するamyloid body, 脳室壁に出現するcorpora amylacea,壊死集に出現する〓灰小体, 利尿剤投与例の副腎皮質に出現するAldacton小体, 慢性膀胱炎に出現するMichaelis Gutman小体, 肝細胞癌などに出現する好酸性球状体, 巨細胞性封入体症, Pneumocystis carinii感染, Rosenthal線維など, さらに縫合糸などがあげられる. 非真菌性のfalse mycosisと一括されるこれら小体は, 殆んどのものがGrocott染色陰性であり, 分芽像が認められないという共通点をもっていた.
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