病理組織学的検索において、組織内にみられる真菌類似小体はfalse mycosisという概念でとらえられつつある。これらの詳細な検討は真菌症の病理組織学的診断精度の向上ならびに鑑別診断上極めて重要である。 過去2年間に、350例の真菌類似小体の標本を蒐集し、ヘマトキシリン・エオシン染色、PAS染色、Grocott染色のほか、弾力線維van Gieson染色、MalloryのAZAN染色、Berlin-blue鉄反応、Kossaの石灰反応などの染色を行ない真菌類似小体の形態および染色性を検討した。 真菌類似小体として検討したものは、アルダクトン小体、硝子様球状体、Russel小体、石灰小体、粘液小球、類殿粉小体、縫合系、Michaelis Gutman小体、myospherosis、核内ウイルス封入体、Pneamocystis cariniiやEntameba histolyticaなどの原虫、標本に附着した微生物、血液由来の類晶体、血管内注入物質、巨細胞内小空泡や星芒状体などである。 真菌は明確な輪郭と構造をもち、一般にヘマトキシリン・エオシン染色では強染せず、PAS陽性でGrocott染色で黒染する。 以上を目安とすると、真菌と種々の点で最も類似するのはPneumocystis cariniiのみであり、このものには出芽をみないこと、肺胞腔内にのみ存在すること等が主な鑑別点となる。また、真菌が単独に上皮細胞内に存在することがない点は、上皮細胞内に存在する多くの真菌類似小体との鑑別点となることを強調した。
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