研究概要 |
1.材料の収集とデータの集積:過去の3300例に更に本年200例の腎生検材料が加わった. 光顕的および電顕的検索, 各種のIgや補体成分の免疫組織化学的検索は順調に続行された. また, 症例を選んでIgや補体以外の蛋白についても組織化学的検討が追加された. その結果, 腎生検材料の診断に不可欠ないし有意義で, 特に電顕材料に糸球体が含まれていない時には有用であった. 沈着物の有無・種類・量や分布のデータは病期の決定にも不可欠な因子であった. 2.エポン包埋された超薄辺片に対するPAP法およびABC法は, 脱エポンおよび蛋白分解酸素処理などの条件設定に苦労しており, 安定した結果を得るべくなお検討中である. 3.PLP固定後, 免疫染色, エポン包埋する免疫電顕法は本年の材料について検索した. 光顕的レベルよりも詳細な染色陽性部位が確認された. 両者の陽性像に大きな異同はなかった. 但し, 周囲の微細構造の変化を読みのに不都合が残った. 4.腎生検材料の診断, 病期の決定, 予後の推定には上記の種々のデータを臨床病理学的に検討する必要があった. 5.糸球体血管極部にしばしば出現する球状沈着について検索を行い, IgMやC3に陽性所見を示し, 疾患特異性はなく, 構造的な虚弱性によるかメサンギウム通液路の転送による原因が考えられた. 6.Dense deposit病に於いてPAP所見と通常の電顕的所見との対比を検討したが, 陽性部位に対応してdense depositsを認めた. 但し, 詳細 局在は免疫電顕の必要があると思われた. 7.SLEに尿細管壁や間質に沈着物を見ることが多く, 糸球体病変の活動性に一致して認められた.
|