研究概要 |
ヒト腎生検材料の病理学的分析は光顕・電顕および免疫組織化学的方法により行われている。しかし、免疫組織化学的方法は糸球体を若干個しか含まない小さな凍結切片材料に蛍光抗体直接法を施行されていて、光顕所見との対比には不十分である。本研究の目的はPAP法やABC法を光顕標本と同じフォルマリンあるいはPLP固定後のパラフィン切片上に行い、できれば電顕レベルにまで広げて、各種の免疫グロブリンや補体成分の分布様式を意義ずけ、腎生検例の診断・病期の決定・予後の推定等を総括的に行うことにある。約3,700例の腎生検材料につき、光顕・電顕及び免疫組織化学的に組織変化や沈着物の有無・種類・量・分布を検討した。連続切片によるほぼ同一の病変局面に加えられたこれら3方法による検索結果は病期の決定や予後の判定に有力な手段をもたらした。糸球体血管極部に出現する小球状沈着物はIgGとC3に陽性を示し疾患特異性がなく、原因として局所の構造的な虚弱性かメサンギウム通液路の転送によるものと考えられた。dense deposit病でPAP所見と電顕的所見との対比を行い、C3陽性部位に対応して抹消基底膜内に高電子密度沈着物を認めたが、さらに免疫複合体の沈着を伴うことがあり、なお詳細な免疫電顕的検討が必要と思われた。ループス腎炎の尿細管・間質をPAP法と電顕で検索し、沈着物を約30%と高率に認めた。ときにPAP法では非特異反応との鑑別が難しいが、十分に有用であることが確認された。この沈着物の由来は糸球体の活動性病変に合併する型と間質性腎炎に伴う型に大別できた。PLP固定材料の免疫電顕法はパラフィン包埋材料は固定不良で、またエポン包埋超薄切片は脱エポンや酵処理の条件設定が難しく、PAP法とABC法に対し安定した結果が得られなかった。
|