研究概要 |
ヒト性腺のみならず, 性腺外にも発生することの知られる卵黄嚢腫瘍の実験モデルとして, 妊娠ラットに胎児剔出術を行い, 卵黄嚢腫瘍に加え, 絨毛上皮腫, 奇形腫を高率に誘発することが可能となった. 本年度はこれら腫瘍の誘発条件の再吟味を行い, (1)ラットの主要組織適合系の異る組合せでの交配を行い, 経時的に胎児剔出後妊娠子宮壁に残置せしめた胎児膜がどのような変化を示すか. (2)腫瘍発生に関する起源細胞の存在していると考えられる胎児膜を同系同種ラットのいろいろな部分に移植し, 腫瘍が誘発されるかどうか. を観察し, 次の知見を得た. 1.胎児剔出後に経日的に切開部子宮壁を組織学的に調べてみると, 既に15日にして, ミニアチュア卵黄嚢腫瘍ともいうべき病変が, 同系交配ラットにも, 同種交配ラットにも見出された. RT1(ラットの主要組織適合系)の異なる交配ラットの胎児剔出では卵黄嚢誘発腫瘍は認められないことから, 同種交配ラットにみられた初期病変はそのまゝ退縮するものと考えられる. 2.胎児膜を妊娠子宮壁に留置することにより, 腫瘍の誘発がおこるので, 腫瘍誘発の起源細胞は胎児膜に存在すると考えられる. 胎児膜を細切して, 同系ラットの腹壁皮下, 睾丸内に注入してみると, 腹壁皮下注入群では, 注入部に, 変性壊死胎児膜を中心とした肉芽腫の形成をみたのみであった. 一方睾丸内に直接注入した群では, 明らかな軟骨組織の発現が認められたが, 軟骨以外の組織成分や卵黄嚢腫瘍をはじめとする腫瘍の誘発を生じなかった.
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