研究概要 |
胃癌培養細胞株 〔KATO-III (スキルス) ;MKN-45 (低分化型腺癌) ;MKN-28 (高分化型腺癌) 〕のconditiomed medium中に産生する成長因子が、ヒト正常皮膚由来線維芽細胞の増殖およびコラーゲン産生促進に及ぼす効果について検討した。 (1) 増殖因子の検討:本因子は、分子量が約8,000で、等電点電気泳動にて、5.0と4.3にpeakをもつ酸性物質であり、^3H-TdRとり込み法による線維芽細胞の増殖態度を検討した所、約3〜4倍増殖が高まることが判明した。また、胃癌細胞間での本因子の線維芽細胞に対する増殖活性を比較した所。特に有意の差は認められなかった。さらに、本因子は、トリプシン処理によって不活性化され、56℃30分の熱処理では失活しないものの、80℃、2分処理では、不活化されることがわかった。 (2) コラーゲン産生促進因子の検討:胃癌細胞の無血清培養2日ないし3日目のconditioned mediumをBio-GelP-60にて、粗抽出し、その画分について線維芽細胞のコラーゲン産生促進能を^3H-prolineのとり込み法で検討した所、いずれの胃癌細胞の粗抽出物質も約3倍高いコラーゲン産生促進能を示し、その程度は、胃癌細胞間で特に有位の差は認められなかった。本粗抽出物質は、EGF存在下(2ng/ml)で0.33%-0.5%二重軟寒天内培養によるNRK-49F細胞のcolony形成を誘導した。また、本物質は市販抗TGF-β抗体を用いたdot blot法にて反応することから、粗TGF-βであることが認められた。 以上の成績から、スキルスを含めた胃癌細胞は、ヒト正常皮膚由来線維芽細胞の増殖を促進し、同時に、コラーゲン産生も促進することがin vitroで明らかとなった。また、線維芽細胞の増殖促進因子とコラーゲン産生促進因子は、別個の因子であり、後者は、TGF-βであることが推測された。
|