研究概要 |
造血系の老化に関する研究は数多いが, 明解な結論は得られていない. 老化促進マウス(SAM-P)は平均寿命約40WKと老化研究の好モデルとなる. このマウスの末血白血球数とヘマトクリフト値の経時間を調べたところ, 33WK令で白血球数は8WK令の値の半分に減少していることが分った. 一方ヘマトリフト値には有意な変動は見られなかった. 対照としたddyおよびBDF_1マウスでは2年間に亘って, このような変動は認められなかった. そこで, この白血球数の減少が幹細胞・白血球前駆細胞レベルでの減少によるものかを見た. 33WK令SAM-Pの脾内幹細胞(CFU-S)と白血球前駆細胞(GM-CFC)数は共に8WK令時の70%程度に減少していたが, この減少はCFU-S, GM-CFCの密度(10^5細胞当りの数)が8WK時の30〜40%に低下していることの反映であるが, 脾内総細胞数の増加によってある程度カバーされているものであることが分った. 骨髄においては, 老化によるCFU-S数の減少は認められなかったが, GM-CFCはその密度, 総数ともに33WK令では8WK時の30%程度にまで減少していることが分った. CFU-Sは主に骨髄で自己再生され, 脾ではやゝ分化の方向に進んでいると考えられており, またマウスにおいては骨髄で白血球への分化が促進されていると言われる. これらから見て, 本年度の結果は老化と共に白血球系細胞への分化が衰えて行くこと, また脾においては幹細胞数の減少があるにしても骨髄での幹細胞の自己再生によって充分カバーされていることを示唆する. 赤血球系前駆細胞については調べなかったが, ヘマトクリフト値から見てその必要はなさそうである.
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