〔研究の目的〕 成人T細胞白血病(ATL)の発症には、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)の感染が密接に関連している。しかし、多くのHTLV-Ihealthy carrierが存在するにも拘らずATL発症者は極めて少く、その平均潜伏期が20年を越えることは、HTLV-I感染はATL発症の必要条件ではあるが十分条件ではないことを示している。そこで本研究においては、ATL発症における宿主の免疫応答の関与を、ラットの実験モデルを使用して調べることを目的とした。 〔結果・考察〕 1.HTLV-I関連細胞株の樹立:致死量X線照射HTLV-I産生MT-2細胞との混合培養法により、Fisher及びKewsisラット胸腺及び脾細胞由来のT細胞株FIRT-1、FIRS-1、LERT-1、LERS-1を樹立した。 2.細胞傷害性T細胞の誘導:上記4種類の細胞株及びWister King由来のTARS-1の生細胞1-2x10^6をラット腹腔内に注入し、2週後に採取した脾細胞及び腹腔内リンパ節細胞をマイトマイシンC処理した同種標的細胞を4-5日間混合培養しエフェクター細胞とした^<51>Cr標識標的細胞とエフェクター細胞を混合し4-16時間後の放出放射能により細胞傷害活性を測定した処、同系のラットに対し5%以上の細胞傷害性を示したのはFIRS-1のみであった。この活性は16時間でピークをむかえ、抗Thy1抗体と捕体処理によって消失することから、主に細胞傷害性T細胞の動きによるものとみられる。しかし、この活性はウイルスを加えても消失しないことや、FIRS-1自身がウイスル抗原を発現していないことからウイルス以外の抗原に対する可能性が強い。 さらに、標的抗原の性状、MHC拘束性の有無、免疫修飾が及ぼす宿主免疫応答性への影響などを検索中である。
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