研究概要 |
ヒトAA蛋白に対応した5種類の合成ペプチドを作製し, マウスを免疫すると, N-末端から37-47残基に対応した合成ペプチドに強い抗原性が見られた. そこでこの合成ペプチドに対するマウス・モノクローナル抗体を作製した. この抗体はヒト以外のマウス, ウシおよびスワンのアミロイド(「ア」)と免疫組織化学時に反応し, 種の異なったAA蛋白の検索に利用できる. またAA「ア」症の発症過程を免疫組織化学的に検索するため, AAの前駆蛋白であるSAAのみに存在するSAAのN-末端から78-136残基のペプチドを合成し, モノクローナル抗体の作製を行った. しかし, この場所は抗原性が弱い為か, いまだ十分有効な抗体が得られていない. 現在も実験を継続中である. 「ア」症の発症に促進因子(amyloid enhancing factor,AEF)の関与が考えられている. AEFは正常マウスにも微量に存在したが, 実験的「ア」症の前「ア」期, 「ア」期及び老齢マウスの脾臓に多く存在した. またAEFが酸性ムコ多糖と関係した物質との報告があり, AEFから酸性ムコ多糖を抽出し, その「ア」症促進効果を調べたが, 酸性ムコ多糖の単独投与では「ア」症発症促進効果は非常に弱く, 蛋白等との複合体の形で「ア」症発症促進効果を表すと考える. さらにAEFに対する抗血清を作製し, 脾臓でのAEFの動態について検索した. 抗AEF血清を用いたABC法で, 前「ア」期と「ア」期のマウス脾髄質の髄外造血巣の顆粒球の細胞質に強い陽性反応がみられた. 無処置マウスの反応は極めて弱かった. AEFは無処置マウスにも微量存在するが, 前「ア」期及び「ア」期で増加することが免疫組織学的にも確かめられ, 顆粒球がAEFを産生している可能性があると考えられる結果を得た.
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