研究概要 |
ヒトHTLV-I産生形質変換細胞は, T細胞であり, 且つIa抗原の発現を常に伴っていることが知られている. この点に注目し, ヒト・ウサギ・マウスの各Ia抗体を用いて, 光顕酵素抗体法, 電顕レベルではフェリチン標識抗体間接法により, ヒト・ウサギ由来HTLV-I産生細胞の細胞膜とウイルス被膜上における抗原発現状況について検索した. 光顕では, HLA-DR,-DQ,-DP抗体は, ヒトHTLV-I産生細胞のみに陽性であり, OKIa1抗体は, ヒト並びにサルとハムスターのHTLV-I関連細胞に陽性であった. ウサギ抗Ia抗体では, 検索した13株のHTLV-I産生ウサギ細胞のみが, ウサギ抗T抗体と共に全例陽性を示し, HTLV-Iにより形質変換した細胞は, ウサギT細胞で且つIa抗原を発現していることが確認され, ウサギにおいてもヒトの場合と全く同様の現象が認められたことは興味深い. マウスのI-E領域の内Ia7に該当する抗体では, マウス細胞が陽性になる濃度では, ヒトとハムスター細胞が陽性であり, ウサギ細胞は陰性であった. 電顕レベルの検索において, 長期培養によりT細胞マーカーを失ったヒトHTLV-I産生細胞では, OKIa1抗原は細胞膜やウイルス被膜上に発現されているが, T抗原は脱落していることが確認され, HLA-DR,-DQについてはOKIa1と同様であることを見出した. 更にウサギHTLV-I産生細胞では, 検索した限りでは, ウサギIa抗原とT抗原との間に解離が観察され, 細胞膜にはIaとT抗原共に存在するが, ウイルス被膜上にはIa抗原のみが発現されていることを認め, ウイルス産生に際し, ウイルス被膜上での膜発現抗原に関して特異なSelectionが生じている可能性が示唆された. 目下, ヒト・ウサギを主体に, IaやT抗原の細胞膜とウイルス被膜上における発現状況の差異について, ウイルス感染と腫瘍化との関連性において検索を継続中である.
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