HTLVーI産生細胞におけるIa抗原発現状況についての検索結果は以下の通りである。(1)ヒトIa抗原(OKIa1、HLAーDR、ーDQ、ーDP)に対する抗体は、ヒト由来ウイルス産生細胞において陽性であり、OIKa1は、サルやハムスターのウイルス関連細胞でも陽性であった。電顕レベルでは、これらIa抗原は細胞膜と同様にウイルス被膜上に陽性であった。又、長期培養株でT抗原の欠如した細胞においてもIa抗原のみは陽性であり、且つ依然形質変換能力を有していた。(2)ウサギIa抗体は、検索したウサギリンパ球13系、すべてにおいて陽性であり、且つウサギT抗体とも反応したが、ヒトIaやT抗体とは反応しなかった。電顕レベルでは、Ia抗原は常にウイルス被膜上に存在するがT抗原は欠落している粒子が認められ、ウイルスの芽出に際し、膜発現抗原の選択が生じている可能性が示唆された。これらIaとT抗原の解離は、ウイルス被膜上におけるIa抗原発現の重要性を示唆するものと考えられる。(3)マウスIーE抗原の内、Ia7の抗体では、マウス細胞が陽性に反応する濃度では、ヒトとハムスターのウイルス関連細胞が陽性であった。(4)輸血、経口、経母乳、FosterーNursing、混合培養によって得られたウサギ由来ウイルス産生細胞についての検索では、ウイルス生成様式に3型が存在し、成熟型核様体をもつ粒子の速やかな芽出とPinched off様式の頻度がヒトやサルの場合と同様にウサギでも高いと考えられた。(5)Ia抗原発現に関連して、インターフェロンのウイルス産生に及ぼす影響を検索した結果、γ→β→αの順にヒトリンパ球においては、ウイルスの生成や放出が抑制されることが明らかとなった。電顕的には、ウイルス粒子のtrappingとして観察され、培養液中の逆転写酵素活性の減少やS+LーCCC細胞の巨細胞形成抑制効果がこれを裏付けた。Ia抗原の消長についても、目下検討中であり、更にT細胞受容体の発現状況についても検索の必要があると考える。
|