研究概要 |
多能性造血幹細胞(CFU-S)の細胞寿命, CFU-Sの放射線感受性, CFU-Sとリンパ球系前駆細胞の3点に絞って研究が進められているが, 第二者について所定の進展を見た. 1)放射線感受性については, 私共が既に従来求めてきた(31/He, C57BL/6Jに加えて, 今回, C58BL/6にても殆ど同一の結果を得た. 即ち, 低線量領域で外挿して得られるDoが95ラドと従来の値と同一であったのに対して, 400ラド及び600ラドでの生残率は, 低線量域からの直線推測値を約10倍も上回り, これに基づいた外挿値より得られるDoは, 270ラドに達した. CFU-Sは, heterogeneousな亜分画の集合体であり, すでに私共が報告したトリチウム標識チミジンの取り込みで観察される細胞動態のheterogeneityと同様放射線感受性についてもある幅をもったage structureを構成する集団であることが, 一層はっきりしてきた. こののち, 600ラド照射した骨髄細胞の生残幹細胞濃度を限界希釈法を用いてより正確に確認し, 学術誌へ発表する予定である. また, それに先だって, これまでの段階の成果を来る3月28日〜4月2日中国・抗州市に於ける中国医学会主催大腺量放射線の生物影響に関する国際会議にて発表する. 2)肝細胞の加齢影響については, 本年度当初計画に従って実験の他, いくつかの付加実験を行った. 結果については, 第50回日本血液学界総会に於て共同研究者の平林が発表の予定である. 要旨は, 1.5FUの処置の有無に拘らず, in vivo,in vitroともCFU-Sは老齢マウスでむしろ増加していた. 2・3日前FU投与群では加齢にともなうCFU-Sの減少がみとめられたが, それ以降では細胞数あたりのCFU-Sは減少するものの単位骨髄あたりではむしろ増加していた. 3.老化環境でin vivo-ncubationを行った骨髄細胞は対照に比べてCFU-Sが僅かに減少傾向にあった. 3)リンパ球系前駆細胞との異同に関する研究は, まだ結果を論ずる段階に達していない.
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