研究概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである. 1.T細胞依存性好酸球増多機構の解析:(1)まず, invivoでの解析の基礎的実験として, AF-nu/+に広東住血線虫を感染させ, 感染後12,15,18日にと殺し, 得られた脾細胞と頚部リンパ節リンパ球をAF-nu/nuの尾静脈から5×10^7個ずつ3回移入したところ, 最終移入後6日から15日まで有意な末梢血好酸球増多(ピークは10日後で399±87/mm^3;対照=37±8)が認められた. ところが, BALB/C-+/+とnu/nuを用いて同様な実験を行ったところ, 有意な好酸球増多は認められなかった. そこで, さらに, 感染後8〜9日のリンパ球を追加移入したが, やはり陰性であった. つまり, 好酸球応答には系統差があると考えられる. (2)感染後17日のマウスの脾細胞ならびに頚部リンパ節リンパ球を, 幼若成虫抗原と共に培養して得られたconditionedmediumを用いて, 骨髄培養を行ったところ, 培養後2日と4日にやや高い好酸球の増加が認められたものの, 対照と有意差がみられなかった. 現在, 半固型寒天培養による検討ならびにその他の基礎的条件の検討を実施中である. 2.髄液好酸球の殺虫機構と宿主組織障害性に関する検討:(1)感染マウスの髄液好酸球はPMA, digitoninの刺戟のみならず虫体抗原の刺戟によっても0_2を生成した. 後者のレベルは前2者のそれより著しく低いが, 髄液好酸球が虫体の障害に何らかの役割を果している可能性が示唆された. (2)感染モルモットの髄液好酸球はマウスのそれと同様に, 著明な脱顆粒像を示し, 殺虫への関与が示唆された. (3)感染マウスの小脳を組織学的に検査したところ, 小脳白質に脱髄, プルキン工細胞の部分的消失, 等の所見が認められた. これらはGordon現象の病理組織所見と一致しており, 広東住血線虫症においてみられる神経障害に, 虫体による機械的障害に加えて, 髄液好酸球が関与している可能性が強く示唆された.
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