研究概要 |
マウスーネズミマラリア原虫の実験系を用いてマラリア感染防御免疫機構の解明を進めた. 強毒マラリア原虫P.b.NK65に感染したマウスは3週間以内ですべて死ぬが, 弱毒性の突然変異株原虫であるP.b.XATの感染ではマウスは一過性の原虫血症を示した後すべて自然治療しその後の強毒原虫感染に対して強力て防御免疫を獲得した. これら原虫の抗原性に違いがあることはモノクローナル抗体によって確認しているが, 防御免疫成立に関与する抗原性を比較するために感染性を無くした原虫を抗原としてアジュバントとともにマウスに接種した. 結果はいずれの原虫も同等の防御免疫をマウスに与え原虫の抗原性には違いの無いことが判明した. これら原虫の感染性の違いは強毒原虫感染じはマウスが死ぬまで原虫血症が上昇を続けるのに対して, 弱毒原虫では感染初期に末梢血中に死滅原虫が出現し原虫血症率が一担下降した後再び上昇し3-4週で自然治癒した. 強毒原虫感染では防御免疫の発達は認められなく原虫および他の抗原に対する抗体産生および細胞性免疫のいずれも抑制され, さらにリンパ球に対する自己抗体が産生された. 一方弱毒原虫感染では感染初期から脾臓内でT細胞とマクロファージの共同作業によって細胞性の因子が産生されて赤血球内の原虫が殺された. この現象はマラリア流行地のヒト血清中に発見されている赤血球内原虫懐死因子(CFF)と類似なものと考えられた. この因子に対する原虫の感受性は赤血球の加齢に依存し, 成熟赤血球内の原虫が選択的に処理された. その後生き残った原虫は幼若赤血球に侵入して増殖を続けるが感染防御に働く抗体が産生されると原虫は生体内から全て排除された. この抗体による感染防御は免疫血清の移入による防御免疫の賦与によって確認できた. (結論)強毒原虫感染では防御免疫の発達が抑制され, 弱毒原虫感染では細胞性および液性の2段階の免疫によって原虫を生体内から排除した.
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