研究概要 |
1.目的:マラリア感染の防御免疫機構を解明するため、マウスに急性感染死をもたらす強毒株と一過性の原虫血症後自然治癒し防御免疫を付与する弱毒性突然変異株のネズミマラリア原虫を用いて感染マウスリンパ球の機能をサブセットごとに調べ、これら毒性の異なる原虫感染と宿主免疫応答の違いを比較した。2.方法:Tリンパ球サブセット(L3T4,Lyt.2)やリンホカイン(IFNーγ、1Lー4)に対するモノクローナル抗体(mAb)をCBAマウスに投与しマラリア(Plasmodium berghei)感染への影響から原虫毒性と免疫応答の関係を調べた。次いで感染マウスより経時的にリンパ球を採取し、in vitroで原虫抗原刺激し、抗原特異的活性化の状態と産生するリンホカインの力価を測定した。3.結果:(1),強毒原虫感染;感染マウスへの抗L3T4およびLyt.2mAb投与による対応するリンパ球の機能消去は、いずれの処理も原虫血症に影響を与えなかったが抗Lyt.2mAb処理マウスと感染から致死までの生存日数が著しく延びた。さらに抗ガンマーインターフェロン(IFNーγ)mAb投与によっても同様な延命効果が得られた。感染の進行とともにマウス脾臓中のリンパ球数は減少し、抗原刺激に対する応答性も上昇しなかったが、Lyt.2陽性T細胞のみと肝臓に集積し、この細胞は抗原刺激に強く反応しIFNーγを産生した。(2),弱毒原虫感染;抗L3T4および抗IFNーγmAb処理マウスでは感染が自然治癒することなくすべてのマウスが死亡した。弱毒原虫で免疫したマウスへの強毒原虫による攻撃接種に対しても抗L3T4および抗IFNーγmAb投与マウスでは強毒原虫の排除ができなかった。4.結論:強毒原虫感染においてCD8^+(cytotoxic/suppressor)T細胞が肝臓にてINFーγを介した免疫病理に関与する可能性が示された。一方防御免疫の導入および維持のいずれにもINFーγが必要であったがT細胞サブセットはCD4^+(inducer/helper)細胞であった。
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