研究概要 |
(1)日本住血吸虫(Si)の成虫を蒸留水中で3時間培養し, 排泄・分泌(ES)された抗原物質の免疫学的性状を検討した. 本抗原を用いたELISAによるIgG抗体検出は, 感染兎血清の場合3週目から陽性反応を示し, 感染濃度に比例して抗体価に差がみられた. プラジカンテル(PZQ)での完全駆虫に伴い, ES抗原に対する抗体値は治療2ヶ月後には治療前の50%の値に急激に低下し, 治癒効果の判定に応用可能であった. Sj卵陽性者133例中, ES抗原でのELISA陽性率は97.0%で, 鋭敏性は虫卵抗原での成績(98.5%)に匹適し, ES抗原に高い抗原性が認められた. SDS-PAGEを用いた抗原の解析では, 分子量10Kから200Kの間に少くとも17本の蛋白バンドが認められた. 本抗原の診断上の有用性については, 今後臨床面と対比させ検討する. (2)ES抗原でBALB/Cマウスを免疫し, その脾細胞から細胞融合を行い, 本抗原に対するIgG_1モノクローナル抗体(McAb)産生株を樹立した. 樹立株はELISAで虫卵や成虫抗原とは全く反応せず, ES抗原に対して特異的に反応した. このMcAbに対応する抗原は易熱性であり, 100°C, 10分の加熱で失活したが, 70°C以下では抗原性が保たれた. 今後McAbを用いたimmunoblottingにより, ES特異抗原の解析を行うとともに, ES特異的McAbを用いたSandwich-ELISAによる血中抗原の検出を検討する. (3)Sj感染マウスをPZQで治療した場合, 投与直後に血中の抗虫卵IgM抗体の急激な減少が認められる. IgM抗体の低下と, 血中の虫卵抗原量の相互関係を検討した. PZQ投与1時間後に血清中の免疫複合体(CIC)を3%polyethylene glycol法により沈澱させ, 加熱処理して抗体を失活させ, 虫卵特異的McAbを用いたlnhibition-ELISAにより虫卵抗原量を測定した. PZQ投与前或いは対照群の感染マウスでは虫卵抗原は検出されず, 投与1時間後に12例中11例に, 0.25〜3μg/mlの虫卵抗原が血清中に認められ, 抗虫卵IgM抗体の減少とCIC中の虫卵抗原量は高い相関を示した.
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