研究概要 |
1.マンソン裂頭条虫プレロセルコイドの表皮微細構造の三次元的観察:宿主消化管に寄生する裂頭条虫にとってその表皮は物理的, 化学的, 免疫学的な宿主攻撃からの防御, また栄養吸収において極めて重要な役割を任っている. 比較的材料の入取し易いマンソン裂頭条虫のプレロセルコイドを試料として, まず透過電顕像ではとらえにくい, 表皮を構築する各構成要素の立体的構造を表皮剥離法を用いて観察した. 観察の結果, 表皮を形成する各要素は, 外形質膜を伴う微小毛, 外細胞質領域, 内形質膜, 表皮細胞層より分泌されたと思われる大小様々な顆粒によって分離される領域(透過電顕的に観察される透明層と考えられる), 均質なシート状構造をなす薄層(透過電顕的に観察される緻密層と考えられる)それから厚い繊維層に分解された. この立体的観察が外環境と接する外形質膜(微小毛1つ1つを被っている)と表皮下細胞層との間で, 表皮下細胞層によって生産される様々な物質を宿主からの攻撃に対する防御, 栄養吸収において, 各要素が選択的に物質移送のための機能を発揮していることが示唆された. 2.チカ由来のプレロセルコイドを用いた, 実験的終宿主ゴールデンハムスター感染時の虫体表皮剥離減少について:実験宿主への感染初期3時間目に虫体はハムスター小腸の末端回盲部に吸着し, 発育を開始するが, この時虫体はプレロセルコイド期外表をおおっていた微小毛を体全体から剥離し, 成虫と一致する新たな微小毛を生じている. これらの現象を走査電顕ではすでに確認しているが, 透過電顕的に本現象を観察する予定である. 宿主-寄生虫相互関係における感染後3時間での微小毛の剥離, 新生という防御に関わる活発な生命活動と推察される現象を1で観察した表皮微細構造を参考にしまた細胞骨格のこれらの現象への関与も観察し, 検討する.
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