1.マンソン裂頭条虫の発育各期における外皮、外皮微小毛の微細形態学的特徴および宿主感染時虫体の頭部を中心とした防御機構について検討された。プロセルコイド初期その外皮は微絨毛で被われる。後期およそ3日でプロセルコイドは微絨毛を微小毛に転換する。その後プロセルコイドから宿主転換の過程で頭部が分化し、虫体各部位の微小毛の形態的特徴があらわれる。虫体頭部は培養液0.7%塩酸水溶液、人工胃液に対し、隔解することなく生存した。これらの結果はプレロセルコイドには頭部局在した防御機構が存在することを示唆させた。宿主の腸壁を貫通した虫体頭部の表面には宿主腹腔細胞の付着が観察されたが、外皮微小毛は破壊されず細胞と接する形質細胞膜は正常で、3時間後には腹腔細胞が隔解するのが観察された。 2.走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微による堀田裂頭条虫プレロセルコイドの実験的終宿主ゴールデンハムスター感染時初期変化の観察結果について検討された。プレロセルコイドの微小毛はフィラメント型微小毛、コノイドタイプないしはブレイド様タイプの微小毛、デジチ型微小毛の3型が観察された。実験的終宿主ゴールデンハムスターに感染3時間後、虫体はその外皮の表面形態を大きく変化させ、フィラメント型微小毛のみが脱落していることが示された。フィラメント型微小毛は横断像においてその微細構造がコノイド型ともデジチ型とも異なっていることが明らかにされた。これらの観察結果から微小毛形成に関与する新たに観察された小管構造およびフィラメント型微小毛の管腔構造は微小毛の機能に大きく関与していることを推察させた。防御機構を含めこれら微小毛の機能のさらなる解明は今後の課題として残された。
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