研究概要 |
抗糸状虫剤ジエチルカルバマジン(DEC)はin vivoでは強力な抗糸状虫作用を示すが, in vitroではその効果は全く発現されないので, その作用機序には多くの不明な点が残されている. 本研究ではDECのin vitroでの抗糸状虫作用の発現を試み, その発現の機序をDECの微小管機能障害に求めた実験が行なわれた. 〔in vitroにおけるDECの抗糸状虫作用の発現の試み〕:Brugia pahangi感染幼虫を塩類溶液で培養すると幼虫は全く発育しないが, LLC-MK_2細胞と培養すると第IV期幼虫まで発育する. 塩類溶液にDECが含まれても幼虫の生存期間は短縮されない. しかしLLC-MK_2細胞を用いた培養系にDECが/mg/mlの濃度に含まれると, 幼虫の生存期間は対照群と同じく長いが, 幼虫は全く発育生長せず, 22日飼育しても感染幼虫のままとどまる. この培養系はDECのin vitroでの抗糸状虫作用発現のモデルとして利用できる. 〔DECの微小管障害作用の検討〕:上記実験結果を著者はDECがLLC-MK_2細胞に何らかの作用を及ぼしたものと考え, まずDECのLLC-MK_2細胞の増殖に及ぼす影響を観察した結果, DECによる著明な細胞増殖抑制を明かにした. そこでDECの微小管.害を考え, 実験を進めた結果, 下記する興味ある所見を得ることが出来た. 1)DECに暴露されるとLLC-MK_2細胞は球形に変化し, 細胞間結合が弱まる. 2)DECに暴露された細胞の細胞質内微小管の分布を抗チュブリン抗体を用いた螢光抗体法で観察すると, 一般にみられる細い糸状の網目配例が乱れ, 微小管は小魂状に変化する, 3)DECはブタ脳より精製したチュブリンの重合を阻害し, またDECは再構成された微小管の脱重合を促進する. 上記のごとくDECの微小管機能障害作用が明かにされつつある.
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