研究概要 |
前年度に引き続き、抗系状虫剤ジエチルカルバマジン(DEC)の微小管障害作用を追求した。ブタ脳より精製したチュブリンを用いて、DECによるチュブリンより微小管への重合阻害を詳しく観察した。DECを終濃度1mg/mlとなる様加えると、微小管への重合の開始が遅れること、十分重合を行なわせても(20分)50%の重合阻害がみられることが明かとなった。低濃度DEC(0.1mg/ml)投与でも、その程度は弱いが、同様な重合の遅れと阻害がみられた。次にin Vitroで再構築された微小管に対するDECの作用を観察した結果、再構築微小管はDECの添加により脱重合することが明らかとなった。またDEC存在下で重合された微小管、あるいは脱重合した微小管を電子顕微鏡で観察すると、管端がリボン状に変化することも明らかとなった。本年度得られた以上の所見は前年度に明らかにしたDECによる細胞増殖抑制と細胞内微小管の現状変化とともに、DECが微小管の機能を障害することを強く示唆するものである。 本年度は新しく、系状虫の微小管へのDECの作用の可能性を追求する為、DECにin Vitroで暴露されたB.Pahangi幼虫を(培養系に侍養細胞は使用しない)スナネズミに移植し、その後の幼虫の発育成長を観察した。その結果、DEC暴露虫体はスナネズミ体内で長期間生存しえず、また発育も抑制されることが明らかとなった。このことはDECがin Vitroで致死的ではないが、何らかの直接的障害作用を幼虫に及ぼしたことを示している。今後、系状虫の微小間に富む器官、細胞(amphids,phasmids,排池細胞等)におよぼすDECの作用が注目される。
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