研究概要 |
1、ヒト、ラット、及びマウス感染肺のhomogenateを比重分画した得たニューモシスチス・カリニ(Pc)をBALB/cマウスに免疫して多種のモノクローナル抗体(MAb)を作製した。その一部につき、反応する抗原の性状を検討した。 2、各MAbのヒト、ラット或はマウスPcへの反応性を間接蛍光抗体法で観察した。最も典型的な例では;(1)抗ヒトPcーMAbはヒトPcには強く(×15,625)反応するが、ラット或はマウスPcにはほとんど反応しなかった。(2)抗ラットPcーMAbはラットPcには強く(×15,625)反応するが、ヒト或はマウスPcにはほとんど反応しなかった(×5以下)。(3)抗マウスPcーMAbはマウス及びラットPcには反応するが(×3,125)ヒトPcとの反応性は弱かった(×25)。 3、^<125>I標識二次抗体を用いたウエスタン・ブロッティング法により各MAbの反応する抗原の分子量の検討を行った。(1)抗ラットPcーMAbのヒトPcとの反応では80kDのバンドが検出された。(2)抗ラットPcーMAbのラットPcとの反応では120kDと52kDのバンドが認められた。一方、(3)抗マウスPcーMAbはマウスPcを抗原とした場合、120kD、70kD、58kDの3本のバンドを検出した。 4、ラットPcをβー1,3ーglucan溶解酵素を主成分とするZymolyaseで処理することにより、上述の表面抗原が可溶化されてくることが明らかとなった。現在ヒト、マウスPcにおいても検討をすすめている。 5、我々の結果は、少くとも、ヒト感染Pc、ラット感染Pc、およびマウス感染Pcは各々抗原性に差異があることを明らかにした。ヒトにおける本肺炎のモノクローナル抗体を用いての免疫診断のためには、従って抗ヒトPcーMAbを用いるのが適当である。現在、実際に患者材料を用いて実用化への可能性を検討している。
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