研究概要 |
細菌感染に伴い遊離される(細菌由来の)脂質が, 宿主の免疫反応に影響を与える. 癩腫型癩患者には, 著しい免疫学的抵抗性の低下が見られるが, この免疫能力の低下の原因を探究するべく以下の研究を遂行中である. 癩腫型癩患者の血液中には, 癩菌由来のmajorな糖脂質である特異なphenolic gbycolipid-1(PGL-1)が検出されることが報告されているが, 著者らは精製したPGL-1ををマウスに投与して, 実験的にマウスに癩腫型癩患者様の免疫抑制状態を誘導した. PGL-1は, 癩菌を接種したアルマジロの肝臓の感染組織より抽出し, クロマトにより純化精製した. その標品は, NMRによる分析からPGL-1であることが確認された. 正常マウスの脾細胞の培養時に, 同標品PGL-1を添加することにより, PGL-1の量に依存してその免疫反応の抑制がみられた. また, PGL-1を静脈内に投与されたマウスの脾細胞は, 投与されたPGL-1の量に依存して, 免疫反応が抑制された. 即ち, アロ・キラーT細胞の誘導能及びレクチンによるT細胞増殖反応は, 著名に抑制された. 抑制状態の脾細胞に, 正常マウスの腹腔内マクロファージを添加することにより, 抑制状態が排除されたことから, 障害をうけているのは, 主に, マクロファージであることが明白となった. 更に, 抑制状態の脾細胞の免疫反応は, マクロファージ系の株の一つであるP388D1の活性化培養上清の添加によって, 一部回復した. しかし, これは障害をうけているマクロファージが機能を回復したのではなく, 障害マクロファージのヘルパー能が, 上清内因子により代行された結果にすぎないと考えられた. 従って, マクロファージの機能の変化について, ヘルパー能やT細胞増殖補助能のような間接的な機能の測定によらず, 直接的に測定する必要があり, 貧食能, マクロファージ細胞内リソゾーム酵素の測定や, マクロファージの活性化に伴い細胞膜上に発現するマーカー蛋白の変動から追求中である.
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