研究概要 |
我々は, すでに, ウェルシュ菌α毒素が血管収縮作用を示すこと, この作用発現時にCa^<2+>取り込みとリン脂質代謝の活性化が引き起こされることを明らかにしている. そこで, 今回, 本研究において以下のことを明らかにした. 1)〔^<32>P〕リン酸存在下.ラット摘出血管を毒素処理後, 常法に従って抽出をして, 薄層クロマトグラフィーで展開, 各スポットをかきとってのラジオアイソトープ活性の測定から, 毒素によるdenavoのホスファチジン酸, ホスファチジルイノシトール合成促進が判明した. さらに, ガスクロマトグラフィーを用いる脂肪酸の測定から, 毒素によるアラキドン酸遊離の促進, しかもこの時インドメタシンが存在するとアラキドン酸の細胞内蓄積量は, さらに上昇することが明らかになった. 2)本毒素の収縮作用は, インドメタシン, OKY-046(トロンボキサンA_2合成阻害剤), ONO-3708(トロンボキサンA_2拮抗剤)で阻止されることが判明した. 3)トロンボキサンB_2測定キットを用い, 毒素のトロンボキサンB_2生成促進作用を明らかにするとともに, 毒素のこの作用がインドメタシン, OKY-046によって特異的に阻害されることを証明した. 4)α毒素により血管平滑筋収縮作用が発現するとき, その細胞中の20,40Kタンパク質がリン酸化されることを明らかにした. 5)ラット腸管も本毒素によって収縮されることが証明され, この作用は, テトロドトキシン, Low Na^+ mediumでは阻止されず, Ca^<2+>流入阻害剤, TMB-8, カルモジュリン阻害剤で阻止されることが判明した. 以上から, α毒素はリン脂質代謝亢進し, それに連動するアラキドン酸遊離とその代謝活性化から, トロンボキサンA_2合成が亢進し, 血管平滑筋の収縮が生ずると推察される. また, 本毒素による腸管収縮も同様のメカニズムと思われる.
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