研究課題/領域番号 |
62570199
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研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
佐藤 博子 国立予防衛生研究所, 体液性免疫部, 主任研究官 (80100080)
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研究分担者 |
伊藤 明治 国立予防衛生研究所, 体液性免疫部, 主任研究官 (10100067)
佐藤 勇治 国立予防衛生研究所, 細菌部, 室長 (40072889)
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キーワード | 百日咳毒素 / 百日咳菌変異株 / モノクローナル抗体 / 感染防御抗体 / 百日咳脳症 / トキソイド / ワクチン / PT遺伝子 |
研究概要 |
百日咳菌毒素産生変異株の中百日咳毒素(PT)及び繊維状赤血球凝集素(FHA)産生状の異なる8株を中心に各毒素と病原性の関連をマウス呼吸器感染系を用いて検討した。PT、FHA共に産生しない菌は噴霧投与菌の定着は認められず感染免疫も獲得されなかったが、PT欠損変異株は起病性は示さないが感染後強い免疫を与えた。変異株の病原性は産生されるPTの性状に依存している傾向が認められ、合成されたPT分子の菌体内外での安定性及び菌体外分泌性が大きく関与していると思われる。又アデニレイトシクラーゼ産生がPT作用を修飾している可能性も示唆されたので今後の検討課題となろう。次世代百日咳ワクチン株候補として毒性は無く抗原生は維持している変異株79Gの性状を検討した。79GはS1欠損PTを産生するがPTS1の遺伝子の解析の結果、親株S1の酵素活性発現に必須のcys^<41>をコードしているTGCがTACに変異しTyr^<41>に変化していた。79Gの産生するPTがS1の活性も抗原性も検出出来ない理由として、S1のcys^<41>がTyr^<41>に変わったことにより酵素活性が失われたのみならず立体構造の変化が他のサブユニットとの結合を妨げ、S1を不安定化し抗原性をも失わせたと考えられる。この事が79GのPT抗原産生量低下をもたらしている可能性が強いので今後菌体内のS1抗原を安定化させる方法を検討し無毒のPT抗原を大量に産生する条件を確立する計画である。一方、感染防御モノクローナル抗体1B7が認識する部位S1_<1-25>を化学合成し、FHA及び破傷風トキソイドとの結合抗原を調整し抗S1_<1-25>抗体を得た。この抗体はS1のみならず無傷毒素とも反応した。現在毒素中和性を検討中である。PTによるマウス脳症の試みはPTの脳室内注射により注射部位を中心とする脳室髄膜炎が認められたが、神経細胞あるいは脈絡叢の障害は認められず、ヒト脳症のモデル系としての可能性は未定である。
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