研究概要 |
我が国の8分離地域(札幌市, 秋田県, 長野県, 名古屋市, 京都市, 鳥取県, 香川県, および久留米市)で分離された, 疫学的に関連のない301株の単純ヘルペスウィルス1型(HSV-1)遺伝子を制限酵素切断点の異同を用いて系統的分類を行い, 以下の結果が得られた. 1.遺伝子を19の切断点を用いて, 制限酵素切断パターンに分類したところ, 87の異なる切断パターンに区別された. 一方, これらの分離株は, 遺伝的に離れた4切断パターンに集中した. 2.これらの分離株で, BamHIA, A間の切断点の欠如とAのa1, a2への切断など, 多数の切断点間で有意の相関々係が認められた. 3.特定の切断パターンにおいて, 分離株の頻度に地域差が認められた. 4.クラスター分析法によって, 日本人由来HSV-1分離株の樹形図を作製した. 以上の結果は, 現在我が国で分離されるHSV-1株遺伝子は多数の切断パターンに分類可能であるが, 系統分類的に主要な4つの集団から成り, その1部の頻度が分離地域によって異なることを示唆する. これらはいつ, どこで遺伝子の分岐的変異を起こしつゝ現在の日本人に定着するようになったのかが, 今後の研究課題の1つとなろう.
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