1.2ー5A合成酵素の機能を知る目的で、ヒト2ー5A合成酵素を生産するマウス細胞を遺伝子工学的に作製した。ヒト2ー5A合成酵素cDNAをSV40プロミーターの下流に接続するようにプラスミドに組み込み、neo遺伝子と共にマウスL929細胞に導入した。生じたG418耐性細胞からヒト2ー5A合成酵素を発現する3種の細胞株、LAS0、LAS3、LAS4、を得た。これらの細胞にVSVまたはEMCVを感染させ、L929と比較したところ、LSA0とLAS4では1/100〜1/1000の増殖であった。一方、LAS3におけるVSVの増殖はL929と同程度であったが、EMCVは1/1000程度であった。細胞の増殖速度を調べたところ、LAS0、LAS3、LAS4ともにL929に比べて倍加時間が延長し、それは細胞内の2ー5A合成酵素レベルに相関した。以上の結果は、IFNによって誘導される種々の酵素とは独立に、2ー5A合成酵素が単独で細胞にウイルス増殖に対する抵抗性ならびに細胞増殖抑制性を賦与することを示している。 2.ヒトHeLaS3細胞の増殖における2ー5A合成酵素の役割を検討した。血清無添加境地で増殖が抑制されたHeLa細胞に、血清、PDGF、EGF、インスリンを加えると2ー5A合成酵素が誘導された。この誘導は抗IFN-β抗体によって抑制されたことから、増殖因子は、必ず、IFN-βを誘導し、それが2ー5A合成酵素の生産を引き起したと考えられる。つぎに、抗IFN-β抗体存在下で、増殖誘導後のHeLa細胞のDNA合成を経時的に調べたところ、最初のDNA合成ピークはなんら影響を受けなかったが、2番目のピークは抗体の添加によって促進された。この結果は、細胞増殖促進と同時に誘導されるIFNおよび2ー5A合成酵素が細胞増殖をフィードバック的に抑制することを示している。
|