マレック病(MD)は、ヘルペスウイルス科に属するMDウイルス(MDV)によっておこる、ニワトリの悪性リンパ腫症である。1973年に、当研究室(秋山ら)によって、初めてMD腫瘍から長期継代可能なMDリンパ腫細胞株の樹立に成功した。その後、世界の各グループにより、同方法による細胞株が数多く樹立された。一方、ニワトリリンパ球の試験管内MDV感染による細胞株を樹立する試みが、広範になされたにもかかわらず、成功例を見なっかた。私達は、試験管内でニワトリ胚リンパ球に腫瘍原性、または非腫瘍原性MDVを感染させ、その後インターロイキン2(ILー2)存在下で培養した。その結果、腫瘍原性MDVで感染させた細胞からのみ、長期継代培養可能なTリンパ芽球様細胞株が得られ、MDCC-MTB1と名付けた。 MTB1株とMDリンパ腫由来細胞株(MDCC-MSB1等)との性状を比較したところ、MDVゲノムDNAのコピー数、およびその存在様式、MDVポリペプチドの種類、核型異常等において、大きな差異は認められなかった。しかし、MTB1は、MSB1等には見られない、ニワトリへの可移植性を示した。 私達は、先に腫瘍原性MDVDNAに共通して認められるDNA構造を示した。このDNA構造は、MSB1と同様MTB1細胞内にも認められた。また、私達は先にMDV抗原に対する、各種モノクローナル抗体を作成し、これらのモノクローナル抗体を用いることにより、腫瘍原性に関連する抗原として、リン酸蛋白(P抗原)を同定した。MSB1およびMTB1細胞内におけるP抗原の発現は、IUdR処理によってのみ検出できるが、わずか数%であった。しかし、ニワトリに移植後、再び培養したMTB1細胞は、IUdR処理後に、P抗原陽性となる細胞数が、数10%にまで上昇した。
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