1年目(昨年度)に行った実験系の整備の段階で、細胞感染の初期における感染成立の検出がSV40では可能であるがその他のDNA型ウイルスでは困難であることが明らかとなった。本年度は、SV40による細胞感染の初期過程の解析を行った。またヒトアデノウイルス12型による感染過程の解析に必要な抗体の作製を行った。 1.SV40の核内感染成立に及ぼす細胞質内構造と機能:ウイルス感染初期過程が細胞による外来性異物取り込みの機能と類似することに注目し、異物取り込み機構阻害剤によるSV40感染阻止効果を検討した。(1)モネンシン、コルセミド、アマンタジンがSV40感染成立をそれぞれ異なる初期過程で阻止した。電子顕微鏡による観察により、ほとんどのウイルス粒子がエンドサイトーシスで取り込まれることが判明した。モネンシンはウイルス粒子の取り込みの非常に初期の過程を、コルセミドはエンドゾームがマイクロチュブルスに沿って核に運搬される過程を阻害することが示唆された。アマンタジンはウイルスの初期蛋白の合成を阻害していた。(2)ライソゾームのpHを上昇させる薬剤(クロロキン、メチルアミン等)は感染成立の効率に影響を与えなかった。以上の結果より、SV40は細胞に吸着後ライソゾームによる不活化や分解を避けながら上記の細胞機能を利用し核に侵入することが示唆された。 2.アデノウイルス12型による細胞感染の成立を感染初期に検出定量するために、SV40と同様にウイルス初期蛋白に対する抗体を用いた蛍光抗体法を試みたが既存の抗体では検出感度が低く実用に耐えないことが分かった。そこでアデノウイルス12型の初期遺伝子であるEIA遺伝子の塩基配列により想定されるペプチドを合成した。これらをウサギ及びマウスに免疫することにより抗血清及びモノクローナル抗体を作製し、現在その有用性を検討している。
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