ヒトサイトメガロウイルスのDNA合成に関する温度感受性変異株の変異点をマーカーレスキュー法で同定し、DNA合成関連遺伝子の同定と機能の解析を行なってきた。分析した株は2つの相補群に属する4株である。得られた結果は次の2項目である。 1.相補群Iに属するAS256に関しては前年度までに変異点を5.1KbのDNA鎖内にしぼりこんでいたが、本年度は野性株とts256のこのDNA断片の両鎖の塩基配列を決定し、その作業をほゞ終了した。この比較の結果、ts256のDNA断片内には1塩基の変異が認められ、これ以外には変異は存在しなかった。またこの5.1KbのDNA断片の全塩基配列の解析から、この断片内には少なくとも2つのOpen Reading Frame(ORF_1、ORF_2)が存在しORF_1は既に発表されているDNA Polymerase遺伝子の塩基配列と相同であった。ORF_2はhomology searchでも相同なものはなく新しい遺伝子と考えられるが、先に述べた塩基の変異はこのORF_2に存在した。つまりウイルスDNA Polymeraseの活性発現にはORF_2の遺伝子産物が必要であることを示し、DNA合成に関連した新しい遺伝子が存在することがわかった。今後は合成ポリペプチドで抗体を作製し、ORF_2の遺伝子産物の同定と機能をしらべていく。 2.相補群IIの3株についてのマーカーレスキューは前年度までに変異はcosmid clonepl T248内に存在することを示したが、本年度はさらにこれをしぼり、変異はHindIII-A断片内にあることがわかった。現在は、さらに狭い領域にしぼりこむ作業を続けている。
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