ヒトサイトメガロウイルス温度感受性変異株のうち、非許容温度でDNA合成が停止する株を選びその変異点をマーカーレスキュー法で決定し、DNA合成に関連する遺伝子の同定とその機能の解析を行なってきた。分析した変異株は2つの相補群に属する4株である (相補群I:ts256、相補群II:ts380、ts589、ts614) 。マーカーレスキューは初めは大きな領域をカバーするコズミッドクローンを使い変異点の大よその場所を決め、順次小さなDNA断片でマーカーレスキューすることで次第に変異点で狭い範囲内にしぼりこみ最後はDNA塩基配列を決め野生株との差を調べた。その結果 1.相補群Iのts256の変異はコズミッドクローンplt212 (map unit 0.22〜0.37でレスキューされた。相補群IIは3株ともmap unit0.37〜0.52のplt248でレスキューされた。 2.ts256は、次いで、HindIII-D断片で、相補群IIの3株はHindIII-A断片でレスキューされた。 3.さらにts256は、HindIII-D断片のサブクローン (BamHl、EcoRl、XbaI断片) でレスキュー実験を行ない、変異点を5.1Kb内までしぼりこんだ。 4.この5.1KbのDNA断片の塩基配列を両鎖共に決定し、野生株との比較を行なった。この結果、この領域には2つのopen reading frameがある。そのうちの1つのORF1はDNApolymerase遺伝子DNA塩基配列と同一であるが、もう1つのORF2はまだ発表されていないもので、DNA合成に関連し、かつDNApolymeraseの発現に必要なものであることがわかった。
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