トリのマレック病 (MD) に対するワクチンはシチメンチョウヘルペスウイルス (HVT) が用いられている。この生ワクチンは終生トリに存在するから組換えワクチンとして良いベクターとなりうる。そこで、本研究の目的は外来遺伝子をHVTゲノム内に挿入する部位としてチミジンキナーゼ (TK) 遺伝子を同定することである。そのためにまず最初にHVTのDNA制限酵素断片地図を作製することとHVT特異的TK活性を検出することから始めた。HVTDNAの断片地図は昭和大学フロリダ研究所の野々山博士と共同で作製し、MDを起こすマレック病ウイルス1型 (MPV1) とHVTの両DNA間にホモロジーが見られる部位は両ゲノムのほぼ同じ位置にあることを示した。次にTKマイナスの細胞にHVTを感染させ、TK活性が誘導されることを見出した。このHVT誘導TK活性は0.2mMTTPで阻害され、またHVTDNAの合成はヘルペスウイルス特異的TKにより特異的に〓酸化されDNA合成を阻害するアシクロビルにより押えられた。このことはHVT特異的TKがこのTKマイナス細胞に誘導されたことを示唆するものである。このHVT特異的遺伝子をHVTゲノム上に位置ずけるため、単純ヘルペスウイルス1型 (HSV1) のTK遺伝子を含むDNA断片をプローブとして用いてHVTDNAとハイブリダイズした。その結果、HSV1のTK遺伝子とホモロジーを持つ部分はHVTDNAのユニーク配列のほぼ中央に位置ずけされた。この位置はHVTと同じDNA構造を示すHSV1のTK遺伝子の位置と略同じである。この遺伝子領域の塩基配列決定とコードされる蛋白がTKであることを同定すること等が今後の重要課題である。
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