研究概要 |
1本鎖のRNAを遺伝子とするピコルナウイルスのRNA鎖の5′末端にはVpgとよばれる小さな蛋白がRNAと共有結合しており, RNA合成のプライマーであると考えられている. 感染細胞より粗面小胞体を分離しinvitroRNA合成を行うとウリジル化蛋白(Vpg-pU,及びVpg-pUpU)が形成される. Vpg-pUはVpg-pUpUに, 更にプラス鎖5′末端の9塩基であるVpg-pUUAAAACAGへと伸長することが確認されている. 本研究ではエンテロウイルス70感染細胞の膜分画を用い, ウリジル化蛋白が効率よく検出できる系を最初に確立した. これは実験に用いたinvitro系でのウリジル化蛋白合成(検出)効率が極めて低く, 伸長反応を促進する因子の検出が困難であったことが原因であったが, 膜分画をDEAEセルロースで部分精製し, 更にATP合成系を反応系に加える方法が有効な解決法であった. 次に非感染細胞からS10分画を調整しinvitro反応系に加えた. ウリジル化蛋白の合成量はDEAEセルロース処理に抱わらずS10分画添加の影響をうけなかった. ウリジル化蛋白の伸長反応はDEAEセルロース処理によって著しく低下するがS10分画の添加によっても回復はみられなかった. 一方, DEAEセルロース未処理膜分画ではS10分画の添加により2倍程度伸長反応が促進される知見を得た. 再現性が極めて高いことから非感染細胞中に伸長反応促進因子の存在が明らかとなった. しかしながらDEAEセルロース処理が不可能という困難性も同時に伴う結果となった. ホヌフォセルロース及びDEAEセルロースカラムクロマトグラフィー, 更に庶糖密度勾配遠心法によりS10分画を精製分画し促進因子を検討したが同定するまでには到らなかった. ウリジル化蛋白及び伸長反応促進因子の検出には高いアフィシティをもつ抗Vpg抗体が必須であるが, この目的のためEv70のVpgの塩基配列, アミノ酸配列を決定した. 合成ペプチドを用いて抗Vpg抗体を作製し, ウリジル化蛋白の検出感度を更に上げることにより, 上記の困難性を解決したい.
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