パピローマウィルス47型(HPV47)DNAの制限酵素、PstIによる3つの切断片、PstI-A、-B、-eの約5000塩基対の配列は、前年度にSanger法を用いてほぼ全容を明らかにしていたが、ウィルスDNAの二次構造などの影響から同法では塩基配列の決定が困難な領域については今年度Maxam-Gilbert法などを用いて確実にした。今年度はさらに残りのPstI-D断片について塩基配列決定を行い、ウィルスゲノム全体の塩基配列を明らかとした。すなわち、Hpv47のDNAは7726塩基対より成る。 このように決定した塩基配列の遺伝情報としての意義をコンピューターを用いて解析したが、その要点を以下に箇条書とする。 1.G+C含有率は約42%である。 2.このウィルスはパピローマウィルスとしての典型的遺伝子構成をとっており、NCR(non-coding region)またはURR(upper reguratory region)と呼ばれる領域に続いてORF(open reading frame)-E6、E7、E1、E2、E4、L2、L1と続きURRに帰着するが、HPV8と同様ORF-E5は存在しない。ORF-L1の3′端からURRにかけてさらに363塩基からなるORFが存在するが、翻訳開始コドンである。ATGは存在しない。 3.塩基配列は疣贅様表皮発育異常症に関連するパピローマウィルスの中でも病変の悪性化と関連が深いと言われているHPV5やHPV8との相同性が最も高く、WilberとLipmanの方法でどちらとも80%近い相同性が見られた。 4.HPV47のURRはORF-L1の終りからORF-E6の第一ATGの前までの554塩基から成り、HPV5やHPV8と同様に他の多くのパピローマウィルスに比べ短い。URR内には38塩基のATのみから成る配列がある。さらに上流にはE2蛋白の結合部位であり、エンハンサー配列とされるACCGNNNNCGGTのパリンドロームがURR内に3コピー、L1領域に1コピー存在する。
|