研究概要 |
BSF-1によるB細胞活性化を制御しているLyb-2分子の構造と機能の解析を行い, 以下の結果を得た. 1.Lyb-2の分子構成:脾B細胞及び二種類のB白血病細胞(I-29, L1210)のLyb-2についてSDS-PAGEで解析した結果, 還元状態では, 従来報告されている45KDの分子の他に105KDの分子が検出された. さらに還元・非還元の二次元SDS-PAGEによる解析から, Lyb-2は, S-S結合で結ばれた45KDと105KDの構成鎖からなるheterodimerと45KDのhomotrimerの二つのサブユニットから構成される分子であることが示唆された. 2.Lyb-2分子の精製:I-29細胞をNP-40で可溶化後, 二次元SDS-PAGEを行い, そのゲルをpolyvinylidene difluoride(PVDF)膜に転写すると約90%の効率が得られることが明かになった. 現在, 100gのI-29細胞を用いて, 可溶化, SDS-PAGE, PVDF膜転写, さらにアミノ酸配列の決定へと進む段階にある. 3.BSF-1レセプターを介するシグナリングのsecond messenger:BSF-1のIa抗原発現誘導活性を指標として, 細胞内代謝の各種抑制剤を用いて解析した. その結果, 細胞Caイオンの拮抗剤(TMB-8)によってのみ, Ia抗原発現が強く抑制された. このことから, 現在の測定技術では細胞内Caイオン濃度を増加させないとされるBSF-1の活性発現にも極微量のCaイオンの動態が重要な役割を担っている可能性が示唆された. 4.BSF-1のIgG1誘導におけるLyb-2の機能:Lyb-2抗体はBSF-1のIgG1誘導活性も抑制した. この機構を限界希釈実験で検討した結果, Lyb-2抗体はIgG1産生細胞のクローン・サイズは影響を与えないが, 前駆細胞頻度を約1/6に減少させることが明かになった. さらにLyb-2による制御は, IgG1遺伝子活性化過程の特に転写過程で行なわれていることが明かになった.
|