本研究の大部分は初年度に成果があがったため、今年度はLyb-2のcDNAクローニングのための実験を行った。Lyb-2分子はS-S結合で結ばれた45kDと105kDの二つの構成鎖からなるheteroclimerと、45kDのhomotrmerという二つのサブユニットで構成されることが明らかになった。Lyb-2がこのような複雑な構造をとること、またLyb-2抗体が膜に転写された蛋白と反応しないことから、発現型のcDNAライブラリーを抗体でスクリーニングすることは困難であると考えられた。そこで、Lyb-2蛋白のアミノ酸配列を決定することから始めた。予備実験で、用いる方法が有効であるか否かを、イムノグロブリン(Ig)を試料として検討した。IgをSDS-PAGEにかけた後にゲルからPVDF(polyvinylidene difluoride)膜に転写し、膜を蛋白染色した。この過程は、約90%の効率で行われていることが明らかになった。さらに染色された部を切り出し、シークエンサーで解析したところ、N末端から10個のアミノ酸配列を決定することができた。次に、Lyb-2のアミノ酸配列の決定を試みた。Lyb-2陽性のBリンパ腫I-29細胞100gをNP-40で可溶化後、同様にSDS-PAGEを行いLyb-2に対応する部のゲルをPVDF膜に転写した。この膜を蛋白染色し転写の状態を検討したところ、非常に材料が少なくシークエンスが極めて困難であった。現在は、さらに大量のI-29細胞を用いる方法と、Lyb-2を大量に発現している細胞株を樹立する方法とによって、再検討する段階にある。
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