研究概要 |
造血系細胞の増殖・分化を調節しているBSF-1とB細胞分化を制御しているLyb-2を介するB細胞活性化機構を解析し、以下の結果を得た。 1.BSF-1による抗体クラスの調節過程におけるLyb-2の役割:Lyb-2はBSF-1の活性の一つであるIgG1産生誘導を、細胞レベルではIgG1産生細胞の前駆細胞が出現する過程で、また細胞内レベルではIgG1遺伝子の転写過程で制御している可能性が示唆された。以前の結果と考え合せると、Lyb-2はB細胞におけるBSF-1のほとんどすべての活性発現を抑制している分子であると結論される。 2.Lyb-2の分子構成:脾B細胞、及び二種類のBリンパ腫(I-29,L1210)を^<125>Iで標識後、可溶化した材料をLyb-2抗体で免疫沈降し、SDS-PAGEで解析した。その結果、Lyb-2はS-S結合で結ばれた45kDと105kDの構成鎖からなるheferodimerと、45kDのhomotrimerあるいは45kDと^<125>Iで標識されにくい構成鎖からなるhesenodimerという二つのサブユニットから構成される分子であることが明らかになった。 3.BSF-1レセプターを介するシグナリングのsecond messenger同定の試み:BSF-1のI_2抗原誘導活性を指標として、PKCの抑制剤(palmitoyl-carnitine)、カルモジュリン拮抗剤(W-13)、細胞内カルシウム拮抗剤(TMB-8)、Na/H antiport抑制剤(Amiloride)等の薬剤を用いて検討した。その結果、BSF-1によるIa発現誘導はTMB-8によってのみ抑制された。このことから、細胞内カルシウムイオン濃度を増加させないとされるBSF-1も、極微量のカルシウムイオンの動態の関与がその活性発現に必要である可能性が示唆された。
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