リンパ球のFcεリセプター(FcεRII/CD23)の一部が可溶化し、可溶性FcεRII/CD23として血清中に存在することが明らかとなっている。この可溶性FcεRII/CD23の機能を明らかにするため、リコビナント分子の作製を行い、機能の解析を試みた。 まずリコンビナント可溶性FcεRIIを得る目的でいくつかのリコンビナント遺伝子を作製し、その産生物を検討した。その結果、可溶性FcεRIIをコードする部分にBSFー2のシグナル配列を結合させたリコンビナント遺伝子を用いることにより、yeastやCHO細胞で効率よく可溶性FcεRIIを産生し得ることが明らかとなった。このリコンビナント分子のIgE結合能を解析した結果、nativeな可溶性FcεRIIと同程度の結合能を示した。またリコンビナント可溶性FcεRIIの糖鎖を検討した結果、O結合型糖鎖を有すると考えられた。 得られたリコンビナント可溶性FcεRIIについて、まずリンパ球の増殖活性を検討したが、そのような活性は認めなかった。 次に可溶性FcεRIIが即時型アレルギーのエフェクターフェイズの制御に関与している可能性を検討した。可溶性FcεRIIはFcεRIIを発現する活性化好酸球やマクロファージへのIgEの結合を抑制すると共に、それら細胞のFcεRIIを介する刺激による炎症因子の産生を阻害した。さらに可溶性FcεRIIは高濃度において、FcεRIを発現する好塩基球へのIgEの結合をも競合的に阻害した。またIgE抗体で感作された好塩基球からの抗原刺激によるヒスタミン遊離についても、可溶性FcεRIIは抑制し得ることを示唆する知見を得た。
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