申請者らはCD8α鎖(Lyt-2)について研究を続けてきたが、今回の一連の仕事によってCD8のもう一つの構成蛋白であるLyt-3をコードする遺伝子を単離し、その全構造を明らかにすることができた。さらに遺伝子レベルのホモロジーからいままで存在しないと考えられていたヒトのCD8β鎖の存在を証明し、マウスとヒトのCD8の遺伝子のほぼ全容を明らかにすることができた。CD8β鎖に関してマウスとヒトで共通していることはともに免疫グロブリンあるいはT細胞レセプターのVあるいはJ領域様の構造をもち、免疫グロブリン多重遺伝子族のメンバーであること、しかしVとJ領域様の構造はともに同一のエクソンでコードされていて遺伝子の再構成は必要としないこと、トランスフェクションの実権からβ鎖の発現はα鎖の発現に依存していることである。一方、CD8α鎖とβ鎖のin vivoでの発現を比較するとマウスではα鎖とβ鎖は常に一緒に発現されているのに対し、ヒトでは一部の細胞でα鎖だけが発現されている。 NK細胞のマーカーであるLeu-19抗体で多重染色を行うとNK細胞ではβ鎖は全く発現されていないが、一部のNK細胞はα鎖だけを弱く発現していることが明らかになった。またアミノ酸レベルのホモロジーを計算するとヒト・マウスとともにα鎖とβ鎖の間のホモロジーは低く約23%であるがα鎖どうし、あるいはβ鎖どうしではヒトとマウスで約50%のホモロジーがあることも明らかになった。CD8遺伝子の機能発現系として現在もっとも可能性のある方法は機能的T細胞のクローンをCD8α鎖あるいはCD8β鎖をトランスフェクションしたBW5147と細胞融合させて機能の変化をみるシステムである。今後さらに検討を続け、より優れた機能発現系を開発したい。
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